眼鏡をかけて変化を見た(報告例)

今は23歳になった女性の診察記録を広げて、読み直しをしていたら、興味深い記述があったので、記事としてとりあげる。幼い年齢のダウン症児に眼鏡を作って、うまくかけ続けてくれるでしょうかというのは、多くの親御さんの共通した心配事です。

4歳になった女児に眼鏡を与えた前後の報告を母親からファクスでもらいました。引用しますと、「昨年(3歳)メガネを一応作って様子をみていました。最初は違和感があり、かけたり外したり。でも、視力が上がったのではと思わせる出来事がいくつかありました。保育園の給食で大好きだったシシャモのフライが、魚の顔がこわくて頭をとらないと食べれなくなりました。お気に入りのミッキーマウスのトレーナーも、怖い、と言って一時期着られなくなり、今まで乗れなかった平均台に自分からチャレンジしたり、階段を急にすいすいと降りたりできるようになりました」 母親がきめ細かく観察している様子がわかる文章です。眼鏡の効果なのかは、単に運動発達能力が向上したからとか、認知能力が向上したからだと説明することも可能でしょう。でもそのうち何割かは、眼鏡の効果が発揮されたということを否定できる人は居ません。これから眼鏡を処方してもらう予定のダウン症児の家族にとって、参考になる情報かもしれないので、掲示しました。

愛児クリニックの外来では、眼鏡について、いつも同じことを話しています。3歳になったら眼鏡を作りましょう。その眼鏡は、児がうけいれるかどうか不明なので、最初だけは、一番安いオールプラスチック製のを購入するとよい。子どもがお気に入りのTV番組を見ている時、親が背後からそーっと接近して、眼鏡をかけます。たいていは子どもが眼鏡を放り投げます。ところが、一部の子どもは、それ以来、ずっと眼鏡をはずさなかったそうです。眼鏡の在る無しで視覚に違いがあるとに気づいたとしか考えられません。一度放り出した子どもにも、以後3~6か月間隔で、同じアプローチをしてもらいますと、だんだんと眼鏡をかけ続ける児の比率がふえていきます。小学校に入学すると黒板を見ないとなりません。さらに眼鏡を重宝している例が増えるという印象があります。何事も、児の認知能力に依存して、発達の働きかけをしないといけないという教訓でもあります。(文責:飯沼院長)