特別支援学校新設を求める署名活動(朝日新聞記事)に大きな”?”

2022/10/25日付の朝日新聞インターネット記事情報です。茨城県で特別支援学校が大規模化して教育環境が悪化しているので、保護者たちが『学校そのものを新設する』ように求めて署名活動し、知事と教育委員長に提出したという内容。特別支援学校が少ないため、遠距離から通う生徒が増え、交通渋滞で遅刻するし、一つのプールを多数の生徒で利用するため享受時間が短縮するとして、近距離に特別支援学校を新設するように求めたという理屈らしい。先月9月に国連で人権関連の報告と委員会が開かれて、日本で、人権侵害すれすれの障害児差別教育の担い手である特別支援学校を廃止する方向に進んでいるか、調査がなされた結果、国際的約束事をほごにして、居直りの主張までしたことが新聞報道されたのを、この記事はすっかり忘れています。薄っぺらなジャーナリストが書いたものと思えば納得です。民主主義と人権尊重の精神を遵守するならば、インクルージョン教育の理念に到達するのは論理的帰結です。我が国日本国は、表面上はインクルージョン教育を是とするふりをしながら、旧態依然とした差別教育体制をできるだけ保存しようと画策してきました。養護学校の看板を突然特別支援学校の看板に変えたり、インクルージョン教育の実験校を少数指定するなどして、海外からの軽蔑看視を姑息に逃れようとしてきました。特別支援教育を現場で担う責任者たち(大学付属教育学部養護学校や障害児教育の学会指導者)は、口で『インクルーシブ教育』と言っていますが、良く聴いてみると、実は、従来から存在する障害児向けのサービスを手あたり次第集めて(英語で、それだとinclusiveと言える!)教育することを論じているとわかります。ここには、いわゆる健常児との共生、共感を確実に育てるという発想・理念がありません。際限ない言葉遊びで、海外からの厳しい客観的論理的批判をやり過ごしてきたのが、これまでの経緯です。

そこで、今回の茨城県の特別支援学校を増やしてくださいという署名運動を見直すと、自らの価値観、立場が問われていることがわかります。あなたは、インクルージョン教育をどう位置付けていますか?信仰の自由と同じで、親御さんの価値観に沿った教育体制があれば、それを選択する自由さえ確保されていれば満足と考えますか。どこにインクルージョン教育を実践している学校がありますか。

愛児クリニックの立場は明白です。インクルージョン教育(もはや”インクルーシブ教育”とは言いません)を最大価値と捉えて、療育を進めています。インクルージョンの立場だと、茨城県の署名運動は書き換えられないとなりません。曰く、「県内各地にあるいわゆる健常児が通っている学校をすべて障害児を受け入れる体制に変えてください」となります。そうすれば、通学バスで時間がかかる不満はなくなりますし、プールは普通学校の数だけ利用数が増えるので、ぎゅう詰め混雑状態は解消します。障害がある児童を集中的に収容して、内部だけで特別教育をするという思想に肌寒さを感じる感性を日本人は持ち合わせていないのか、とても気になります。(文責:飯沼院長)