新型コロナ肺炎とダウン症

まじめに療育相談に取り組んでいると、まじめな親御さんから教えられることがある。今回、熱意ある母親から、こんな英語の情報を知っているかと尋ねられた。見たらScienceという雑誌(昨年12月発行)の記事。読んでいないと正直に答えて、記事検索を教えてもらった。読んだ内容を抄訳する。この雑誌は科学論文を掲載しますが、一部は一般記事も出ます。今回はそれにあたり、いくつかの研究者と面接もして、論文の解釈を論じています。特に医学関係の論文を、実践にもちこむには、特段の注意が必要で、ともすればそれを根拠に行政は早めに始動しないので、歯ぎしりすることが多い。
【近親者のダウン症女性(36)がコロナ肺炎で入院したことから始まる。4月に入院し人工呼吸器を装着。家族に覚悟を告知。その時、ダウン症の人が持つ感染に弱い体質と向き合うことを痛感させる。英国の大規模調査の結果、ダウン症の入院確率は5倍高く、死亡率は10倍の高値。背景として免疫異常が考えられた。英国のワクチン優先の人たちとしてダウン症の人を含めることを推奨した(英国ワクチン免疫合同委員会)。米国では、そのような動きは一切ない。解剖学的には、舌が巨大で上あごが小さく、扁桃腺とアデノイドが長く肥大して、喉の筋肉が弛緩しているのが呼吸器感染を引き起こしやすいとする。遺伝子研究でも、SARSコロナ感染の研究結果から、TMPRSS2が注目された。これが生成する蛋白がウイルスの細胞侵入を容易化すると。しかもダウン症細胞では、つねにこの遺伝子発現が理論通りに1.6倍だった。またダウン症の人のT細胞の働きが鈍く、その指示で発生するB細胞の数が少ない。また間違えて自部の身体の組織を攻撃するのを防ぐ役目の蛋白の生成量も少ない。それと対比して、目立たぬ程度の炎症を招く蛋白の量は多く、慢性の炎症を水面下でつづけている。こうした免疫の地面に新たな炎症刺激がくわわって、炎症の嵐が全身を襲っているのではないか。これこそがコロナ肺炎の特徴。また、ダウン症の細胞では、インターフェロン(IF)の受容体の遺伝子4個が21番染色体の上にある。発現は増加している。当然IFの効果も増す。IFはウイルス感染に抵抗する蛋白なので、増えればよいように思われるが、もしも慢性的に高値がつづくと、慣れが生じて、効果が低下する。NY市病院の調査で、ダウン症の感染者は、普通集団と比較して10歳若い。同年齢で比較すると重症化する例が多い(比較値が無い)。疫学者たちも、その傾向を認め、特に40歳以上のダウン症の人に優先的ワクチン接種を勧める声明が出た。あるダウン症に関連する医者は、「品薄とされるモノクローナル抗体の治療を同年齢以上なら適用すべきだ」と主張。しかし確実が証明がないとして、CDC等の組織は特に声明を出して。baricitinibという薬がある。IFの信号を切断する作用で知られる。既に実験ダウン症マウスで効果が確認された。FDAは12月に、重症の入院患者に対して、従来のremdesivirと併用して、本剤を投与することを承認した。】
早め早めに行政に働きかけることは、福祉思想の持主だったら、当然のことですが、ここは日本の国。無策の福祉政治。親たちの無気力は当然か。(文責:飯沼院長)