clinic状況報告 健康管理の一助になれば ①

最近、貴重な経験をしていると思い、その一端をお披露目します。

①新型コロナ肺炎 院長は昨年12月下旬にひどい咳発作に襲われました。同じころにクリニック関係者一同で近くの中華料理店で忘年会を開きました。院長は当然マスクをかけて参加しました。その店は、北京語でも上海語でもない中国語を話す店員が働いています。好きな店なので、週2以上は利用していました。院長は喘息がある家系で、特別に近医で、テオフィリンを含む薬剤をお願いして服用しました。しかし咳は止まらずなんと10日間一睡もしない夜を過ごし、体力気力が最低水準よりも下がり、これでは死んでしまいそうだ、とまじめに考えたほどです。途中で、胸部レントゲン検査をうけて、肺炎の所見は無いと確認できました。微熱は2日位で消えました。味覚異常は意識しませんでした。喘息の治療薬だけを処方してもらいました。で、薬剤の効果は全く感じられないまま、唐突に1月5日から咳発作が軽減し、たちまち3日後には普通の呼吸ができるようになりました。普通に睡眠がとれることがこれほど幸せだと感じた次第です。世間では新型コロナ肺炎に関連して、抗体検査ができそうだと報道があります。ぜひとも、検査を受けてみたいです。(5月7日、米国ではこの思考傾向を英語でthinkihadititisと呼ぶそうです。)忘年会に参加した方たちの健康が心配になり、快方に向かった時点で、参加された方たちに連絡をして尋ねましたら、いずれも健康に過ごしているとのことでした。

②不用不急の自粛宣言と診療 政府と自治体から、三つの密を避けるように注意警報が出され、人々の間で徐々に防疫意識が高まりました。3月下旬から診察予約取り消しの電話がかかり始め、4月になると9割以上に達しました。感染防御の観点からやむを得ない変化と受け止めておりましたが、少しづつ、もやもやとした感想をいだくようになりました。愛児クリニックでの療育相談は、その後の厳密な将来計画と立て、時間系列に従って、必要不可欠の働きかけを、適宜、保護者の方たちに実行してもらうやり方をしています。小児の場合、発達が止まるということは、異常ありということと同じです。定期的に4か月毎に来院してもらっている予約ですが、予約をノートに記入する際には、かならず重要な注意点をメモしてあり、次回、何を集中して検討し、さらに伸ばそうとしているかという方針が記されています。キャンセルは、その予定を阻害してしまいます。親御さんは、それまで順調に発達しているから、もう手放しでも発達するだろうと考えてしまうのは、わかります。しかし、現実は甘くありません。数年から10年も途絶の末に、ある日突然、「先生、たいへんです。子どもの様子がおかしいんです」と電話がかかってきます。よく聞いてみると、思春期退行現象だとわかります。院長は、内心、言わんこっちゃない、とイラつきます。きちんと定期受診している子どもにそんな現象は生じません。思春期退行とは、順調に知的に発達してきた子どもが青年期以降に、言葉を失い、発声はアウッアウッというだけ、昼夜逆転、意思疎通なし、精神科の投薬は効果なしという特徴で、容易に診断できます。聞くところによればダウン症集団の15%くらいの頻度だそうで、この数字に、こちらは驚愕してしまいます。治療も簡単と言えば簡単です。当たり前の人間として周囲の人が遇するだけで治ります。こうした経験を踏まえて、予約を入れています。必要で欠かせない受診なのですが、新型コロナ肺炎自粛要請を受けて、療育相談を軽々に延期できるという理解をする親御さんが、こんなに多勢居たことに、ある種のショックを受けて、前回のニュースを公開しました。ご心配をかけた少数の親御さんからお便りをいただいたことに感謝申し上げます。

③自由という思想 暇な時間を利用して、読書三昧です。京都大学哲学科の教授であった加藤尚武氏の「倫理学で歴史を読む」を味わっています。自由の権利の中に、「愚行権」が含まれていて、過去に母体血清マーカー検査普及を目指した院長の活動に際して、マスコミと親の会から、一方的な批判を浴びた中で、妊婦の選択権利を侵犯してはいけないと、簡単にさとしてくれたと受け止めています。実際に京都の日本倫理学会に参加した際に、この論旨を傾聴しました。他人に迷惑をかけない限りは、なにをしようが制限されない、という論理は、加藤教授によれば、消極的な意味しかもたないそうです。他人に迷惑かけるという関係性が問われるわけで、価値観が違うと結論も違うこととなります。胎児に迷惑をかけているから出生前検査を受ける権利は妊婦に認めないというならば、たばこも酒も同様なのですから、認めません。病気を持つ女性が妊娠したら、流産リスクが高いので、妊娠する権利を認めないとなります。逆に胎児に人権がないとみなす人には、この区別は要りません。奴隷を認める人には、相手の人間に権利など最初から認めていません。その意味で、「愚行」のカテゴリーに含まれません。では、重要な療育相談の予約をキャンセルすることは、「愚行権」の一つとして容認されるのだろうか。ダウン症児にとり迷惑とか有害とならない選択だろうか。だから心の中に育ってきたもやもやが晴れないでいます。(文責:飯沼院長)